第143章 底が知れない

一瞬、川西拓海の顔色がどん底まで沈んだ。椅子を蹴る勢いで立ち上がり、詰め寄ろうとする。

だが――

袖口が、ふわりと引かれた。

水野佑奈が、そっと彼の腕を掴んでいる。小さく首を振り、「私がやる」と目で告げた。

拓海は唇を噛み、結局、足を止める。

その視線のやり取りの最中、審査員席の小村有希が、唐突にフランス語で話し始めた。

早口。刺々しい抑揚。嘲りが隠しようもない。

挑発するように、まっすぐ佑奈を見据える。

わざとだ。

この場で水野佑奈を恥をかかせるため。

小村は決めつけているのだ。

中卒の女がフランス語など分かるはずがない、と。

聞き取れず、言い返せず、黙り込む。

...

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